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「学習系統」及び「学習領域」の選択

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  • 学問系統

    JPUEでは志望校を選んで出願するのではなく、日本の大学への留学後、その大学で学びたい学問を選択して出願する、「学系選択出願方式」を採用しています。 出願の際に志望する「学習系統」を3つ選択し、さらにその選択した3つの「学習系統」に付随する、 それぞれの「学習領域」を3つまで選択して出願してください。
    下記は、「1)文学·歴史·文化」から「18)看護学、保健・福祉学」の合計16の学習領域の表題を表示しています。 それぞれ興味のある「学習系統」アイコンをクリックすると、各系統内の「学習領域」の表題が表示され、さらに表示された当該領域名をクリックすると、 各領域の学習内容や就職のイメージが表示されます。
    尚、一部「学習系統」選択に受験が必須となる科目があります。「学習系統」右側に記載している受験科目との整合に注意して出願を進めてください。
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    01.文学/歴史/文化学

    文学/ 文学を通して人間の本質を探る
    ■学習内容
    小説や詩、戯曲と行った日本や世界の文学作品、日本独自の文学である古文、和歌、俳句、さらに映画の脚本やコミックなど、読むことを通じて登場人物の心の動きや作者の意図を研究する「作品研究」や、文学作品を文化現象のーつとして捉え、作品の書かれた時代の社会背景や歴史などの「分析研究」を行う。アプローチ方法は、作家研究、特定地域・時代の文学研究、言語の語い・文法研究などさまざまだ。文学研究はいわば人間の研究であるため、その研究領域は幅広い。文学だけでなく、言語学、民俗学、哲学、歴史学、心理学、社会学、芸術学などへの関心も不可欠だ。
    日本の文学部は大きく二つに分かれる。日本の文学作品について研究する日本文学系(国文学系)、外国の文学作品を扱う外国文学系だ。両者を比較する比較文学系もある。もちろん外国文学系の中には中国文学を研究する講座も存在する。なお、日本文学系は語学を学習するためのいわゆる「日本語学校」的な存在ではなく、日本語で書かれた「文学作品を研究する場」であることに注意しておきたい。
    大学では1・2年次に文学に関する基礎知識を修得する。外国文学系では、作品をその国の言葉で理解するための語学教育も徹底的に行われる。そして3年次以降はゼミなどに所属して、作品を深く学ぶというのが一般的だ。
    ■キャリアパス
    文系で学ぶ学問は汎用性が高いため、就職先は必ずしも大学で学んだ学系を活かす方向だけに留まらない。ほかの文系学部にも言えることだが、マスコミ・出版関係などへの就職が人気である。また、旅行会社など外国文化への知識を活かせる就職にも有利である。

    歴史学/その時代の社会を立体的に再現する
    ■学習内容
    歴史学、地理学は、いずれも特定の時代や地域の人間の営みを探求することを通して、これからの人間社会のあり方や社会構造に対する研究、暮らしやすい街づくりなどを考える学問だ。
    歴史学では、過去の出来事や物事の変化を対象とし、史料に基づいて過去の人間社会のありさまを記述し、先人の叡智を学び、それを現在と未来に活かしてゆくことをめざす。一般的に「日本史」「東洋史」「西洋史」の3分野に分かれ、それぞれ政治史・文化史・宗教史などの区分がある。しかし、最近は、国家という単位だけでなく地域や国家間の関係性に注目したり、政治や文化を包括的に促えようとする試みがなされている。また、史料の分析が不可欠のため、対象地域の語学力も要求される。
    一方、地理的特徴が人間の営みに与える影響、そこから生まれる地域的特徴などを分析することで、自然と上手に付き合っていく方法を研究するのが地理学だ。基礎として「地誌」「地図学」「地理学史」「系統地理学」を学ぶ。系統地理学はさらに「人文地理」「自然地理」の2分野に分けられ、人文地理では人口、集落、政治・経済、文化など各地域の特色を、自然地理では地形や気候が人間の生活や産業に与える影響を研究する。科目には測量学や製図実習など理系の要素が強いものも多く、フィールドワークという実地調査もある。
    ■キャリアパス
    ほかの文系学部と同じく、マスコミ・出版関係などへの就職が人気。また、社会構造や地理的特徴を学んでいることから、旅行会社や測量会社への就職も有利だ。

    文化学/「文化」を正面からとらえる
    ■学習内容
    文化学と一口に言っても、言語、思想、宗教、生活、歴史、芸術、メディアなど研究対象はさまざま。人間や人間が作り出した文化を総合的に促えるのがこの分野で幅広い視野と柔軟な思考力で様々な角度からアプローチする。学科としては、特定の国・地域や文化圏を中心に扱う地域文化系、異った地域、文化を比較する比較文化系などがある。また、最近では国際化時代に対応した異文化理解と語学力、コミュニケーション力を養う国際文化系など、多様なカリキュラムを展開している大学も多い。
    ■キャリアパス
    この学系の研究はさまざまな領域に及ぶので、卒業後の進路も多彩。企業側からすると、幅広い視野と柔軟な思考力を持つこの学系の卒業生への期待度は高い。ほかの学系に比べるとマスコミや出版への就職が目立つが、サービス業などマーチャンダイジングの分野で力を発揮する人も少なくない。また、大学院へ進学する人もいる。

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    02.言語学

    言語学/語学力を基礎に「真の国際人」をめざす
    ■学習内容
    まず気をつけたいのが、「外国語学部」はコミュニケーションツールとしての語学学習を行う場ではなく、言語を専門的に解析し、その国や地域の歴史文化、政治、経済などへの理解も深めていく場であるということだ。ある意味では社会科学の色彩が強い学系ともいえる。まず言葉を習得することから始め、その言葉が使われている国や地域を理解し、異文化交流へとつなげていくのが特徴だ。なお、日本の「外国語学部」には、もちろん「中国語学科」も存在する。一方、「外国語学部」という名称でありながら、日本人にとっての母国語である日本語を一つの言語としてとらえ、世界的規模で研究する「日本語学科」もある。国際化にともない、外国人に日本語を教える日本語教員養成の力リキュラムを有する大学も増えているので、日本や中国で日本語を教える日本語教師を志望しているならば、各大学の「日本語学」のカリキュラムの詳細を調べてみるとよい。
    ■キャリアパス
    中国人が高度な日本語スキルを身につけたときに活躍できるフィールドは幅広い。特にグローバルな事業展開を進めている日本企業では、日中間の背景や歴史を理解し、日本語を母国語と変わらずに使いこなせる人材へのニーズは非常に高い。
    一方、通訳・翻訳を職業とする人や、母国で、または日本に留まって、日本語教師として活躍する人も多く見受けられる。

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    03.法学/政治学

    法学/法律家だけのモノじゃない
    ■学習内容
    日本の大学の法学は、まず日本の法律研究を行う学系であることを押さえよう。原則として中国の法律を学ぶことはない。日本の法律は六法全書という法律書にまとめられ、法律のスペシャリストになるためには司法試験という国家試験に合格する必要がある。法学が扱う研究分野は一般に知られている以上に幅広く、時代の状況に応じて柔軟に対応している。法律家というスペシャリストを輩出する学部ではあるが、幅広い知識を身につけ、広く一般社会で活躍できるゼネラリストを育成するという側面もある。
    法学は大きく、法学とは何かを学ぶ基礎法学と、法解釈や適用法について学ぶ実定法学の2分野に分かれる。基礎法学には法哲学・法社会学・法史学などがあり、実定法学では基本六法(憲法・刑法・民法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法)を中心に国際法や経済法についても学ぶ。2・3年次以降はコース別に専門的な研究が始まる。六法を中心とした司法系、企業活動と法の関係を研究する経済法学系、国際社会と法がテーマの国際系などがある。
    ■キャリアパス
    新たな法的諸問題が生じたり、国際性が求められるなか、法律専門家の活躍の場も変化してきている。法曹界や行政に進む人は少数派で、金融、商社、メーカー、マスコミ、大学院など、進路は多岐にわたる。国際化企業の法務関連の仕事に携わる人も多い。近年、法科大学院(ロースクール)開設など法学部の位置づけが見直され、法学部が、より専門的な人材を法曹界や企業法務などに送り出す場として再認識されている。法実務の専門家を養成する場としての重要性が増している。

    政治学/現代杜会の抱える問題を発見・解決する
    ■学習内容
    政治学は、社会のさまざまな対立や利害を調整し、私たちの生活をよりよくするための仕組みの構築をめざす学問である。政治思想や政治哲学といった理論分野を核に、政府や地域・政策の動向、地方自治、さらには紛争や貿易摩擦など国家間・地域間の問題を扱う国際政治など、さまざまな政治現象を分析・研究する。
    政策学は、現代社会のあらゆる問題・課題を多様な視点から考え、解決するための政策を立案・分析する学問で、主に日本の政府や自治体の政策について学ぶ「公共政策」、地域活性化・都市空間づくりに関する政策を学ぶ「地域政策」、温暖化や資源・エネルギー問題に関する政策を学ぶ「環境政策」、それらに加え国際・経済・情報など学問の枠を超えた様々な問題の解決をめざす「総合政策学」などの分野がある。
    ■キャリアパス
    報道機関や新聞社には、政治学を専攻している人が比較的多いが、マスコミは狭き門である。一般企業では、金融、保険、製造業が多い。民間企業の場合、講義やゼミナールで研究した国際政治やグローバル経済などの知識を活かして、企業の国際部門で活躍する人もいる。また、公的組織であるNGOやNPO、国際問題の解決を図る機関への就職をめざす人も多い。

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    04.社会学/福祉学/観光学

    社会学/多彩な研究対象・アプローチ
    ■学習内容
    社会学という名前が示すとおり、社会で起こっているあらゆる出来事や現象が研究対象である。家族・都市・メディア・環境・文化・教育などその領域は幅広く、それらに対するアプローチの視点もさまざまだ。社会学は多彩な学問領域を網羅する学際性の高い学問といえる。1・2年次は基礎科目を中心に理論や調査法を学びながら研究の方向性を絞り込み、3年次以降ゼミやコースごとにテーマを決めて研究を進める大学が多い。社会学研究で重視されている科目に社会調査実習(フィールドワーク)がある。聞き取りやアンケート調査、テーマに関する文献資料の収集を行い、仮説の裏付けとなる調査分析を行う。また、調査から得られたデータの分析のために、統計的手法を身につけることも必要とされる。
    ■キャリアパス
    研究内容が多彩なため、卒業後の就職先はバラエティに飛んでいる。マスコミやマーケティング関係、コンサルティング関係に進み、大学で学んだフィールドワークのノウハウを活かした仕事をする人や、公務員になって社会問題の解決に携わる人も多い。
    また、製造業や小売業を選択して、商品開発や販売戦略を手がける人もいる。近年は、大学院に進学して、研究者を志す人も増えてきている。

    福祉学/理論と実践の両面から迫る
    ■学習内容
    福祉に関わる仕事というと、介護を必要とする人を直接援助する仕事をイメージしがちだが、それが全てではない。社会制度としての福祉は法律や制度・政策に基づいて成りっている。したがって、介護や援助といった技術面だけでなく、その背景にある政策や理論など幅広い知識を身につけることが求められる。
    大学では、理論研究のための科目として、社会福祉の成り立ちに関する社会福祉原論、制度や機構について学ぶ社会福祉法論、生活保護の意義や仕組み・運用について検討する公的扶助論などが開講されている。
    もう一方の柱である技術面については、援助サービスの方法や技術を修得するソーシャルワークやカウンセリング実習、介護実習などの履修科目がある。
    ■キャリアパス
    所定の単位を取得すれば、社会福祉士の受験資格や介護福祉士の資格が得られ、社会福祉施設や医療関連施設で活躍できる。任用資格である社会福祉主事の資格を取得し、ソーシャルワーカーとして勤務する人もいる。また、福祉住環境コーディネーターとなって、福祉の視点からバリアフリーやユニバーサル・デザインを手がける場合もある。最近は高年齢向けマーケットが拡大していることもあり、一般企業に進む人も多い。

    観光学/文化と地域を繋げる、新しい旅の形を創造する学問
    ■学習内容
    観光学は、観光産業や地域振興、文化交流の観点から観光のあり方を学び、持続可能な観光の在り方を探求する学問である。観光資源の開発や地域経済の活性化、観光マーケティング、観光政策などを幅広く学び、観光が地域社会や文化に与える影響を理解する。また、ホスピタリティの重要性や、異文化理解に基づく観光客との交流を通じて、地域に根差した観光のあり方を考える力を養う。1・2年次では、観光に関する基礎理論や統計データの分析手法を学び、3年次以降は地域の実地調査や観光企画のプロジェクトを通じて、実践的な観光開発に取り組むのが一般的な学習の流れである。さらに、エコツーリズムやサステイナブルツーリズムの重要性も学び、環境と共存する観光の未来を創造する。
    ■キャリアパス
    専門を生かし、観光関連の職種に就く人が多くいる。各種レジャー産業や旅行代理店の添乗員、航空会社の受付などで活躍する。また、外国語の能力を生かして、外国人専門の観光ガイド(通訳案内業)への道もある。

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    05.国際関係学

    国際関係学/あらゆる角度から国際社会を分析
    ■学習内容
    国際関係学は「国際的な平和維持のためになすべきことは何か」を探ることによって発展してきた学問だ。複雑に絡み合う国際的な問題に対してさまざまな観点から柔軟に対応し、的確に解決策を作り上げられる人材の育成を目標とする。この学系の特徴は、世界の国・地域同士の関係について、政治、経済、社会や文化などあらゆる角度からアプローチしようとする姿勢である。また、国際連合やEU、NGOなどの国際的な組織・連合体が研究対象に加わっている。経済学部や法学部、あるいは外国語学部でも国際的な視点で研究する専攻は設置されているが、国際関係学部(学科)は、一つの学問の枠にとらわれない学際的な色合いが濃い。自由な観点から研究できるという点では、他学部にない柔軟さを持っている学問だといえる。
    ■キャリアパス
    語学力と国際感覚を活かし、外務省の職員や国際公務員など外交や国際機関で業務に携わる人もいるが、難関の試験を突破しなければならない。
    また、通訳案内士や旅行業務取扱管理者などの資格を取得して、ツアーコンダクターや通訳観光ガイド、ホテルスタッフとして活躍している人もいる。
    最近では、NGOや民間のシンクタンクなどで、国際協力や政策提言に貢献したいという人も増えている。

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    06.心理学

    心理学/系統的に理論を学び、自分の考えをまとめ上げる
    ■学習内容
    この学系に共通するのは、「人間とは何か」「自分の存在とは何なのか」といった、昔も今も変わらない普遍的な「問い」に学問的にアプローチすること、人類と地球との共生の問題や、頻発する宗教紛争の解決、あるいは人間の「はじめ」と「おわり」にかかわる生殖や脳死問題など、今後もさまざまな場面で哲学的視野は要求されている。
    哲学は、人間の存在や思考に関する諸問題を研究する。西洋哲学、東洋哲学(インド哲学、中国哲学)など、対象とする地域ごとに区分される。大学では、1・2年次は哲学概論や哲学史など基礎的な知識を身につけ、3年次以降はゼミ形式の授業を中心に原書を講読しながら、より専門性の高いテーマに取り組むというのが一般的だ。また、哲学科の授業には原書が多く取り上げられるので、読みこなす力が必要となる。英語やドイツ語のほか、ギリシャ語、ラテン語、サンスクリット語などの古典語の学習が必要になる場合もある。
    哲学と深いつながりがあるのが宗教だ。宗教に関する学問は大きく、宗教や宗教的行為についてあらゆる側面から研究する宗教学と、仏教、キリスト教、イスラム教など個別の宗教の研究とに分けられる。
    ■キャリアパス
    深く多岐にわたる研究領域の特性上、それらの専門的知識を活かせる職種は限られる。その一方で、学んだ学系の延長線上に留まらず、より幅広い分野で活躍する出身者も多い。業種としては、マスコミ・出版関係、金融、商社、流通、製造、サービス業などだ。このあたりは文系他学科と同様である。専門的な研究ができる環境を求め、大学院へ進学する人も多い。

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    07.教員養成/教育学

    教員養成/教育の本質を学ぶ教育学と教師をめざす教員養成系
    ■学習内容
    教育学系は、大きく教育学と教員養成系の2つに分けられる。教育学とは、学問として「教育」を研究する分野。これは教師になることを目的とするものではなく、教育の本質や目的、人間形成と教育との関わりなど、より大きな観点から教育のあり方を追求する学系だ。学校教育だけでなく、教育行政や社会教育、生涯教育などその領域は幅広い。また、人間の心理や行動といった人間の内面についても深く掘り下げて研究する。
    教員養成系は日本での教員免許の取得が卒業の要件となっている「教員養成際程」と免許の取得を義務づけず、幅広い知識をもった人材を育てることを目的とした「総合科学課程」に分けられる。教員養成課程は、文字どおり日本の学校教員の養成を目的とした課程である。ここで注意したいのはあくまでも、この学部で取得できるのは日本での教員免許であり中国国内での教員活動は原則としてできないということである。カリキュラムも免許取得に必要な科目中心に編成されている。1・2年次にかけては教養教育科目や基礎教育科目を学び、3年次以降は各教科の指導法や子どもの発達過程など必要な技術や知識を修得する期間にあてられている。また、一番のヤマ場ともいえる教育実習もこの時期に並行して実施される。総合科学課程では、情報・国際・人間科学・環境・地域・芸術・スポーツなどの専攻コースが設置されており、学際的な研究が展開されている。また、生涯教育を扱う大学も多く、学校だけでなく幅広い場面での指導者の養成が行われている。
    ■キャリアパス
    業種を問わず一般企業全般が活躍の場となっている。そのなかで、生涯学習や教育支援に関連した企業や部署・部門で活躍するケースが多く見受けられる。また、マスコミやサービス業で活躍する出身者も少なくない。大学院に進み、臨床心理士などの資格を取得して、福祉・医療機関、保健機関で働く人もいるが、いずれにしてもコミュニケーションをとるために高度な日本語能力の習得が必要であることは肝に銘じておこう。

    教育学/子どもを科学する
    ■学習内容
    児重学は、幼児や児童の成長や発達をさまざまな角度から科学する学問である。「児童心理学・発達心理学」「児童教育学・幼児教育学・保育学」「児童福祉学」「児童保健学」「児童文化学・児童環境学」の5つを柱に、子どもと子どもを取り巻く環境への理解を深める。大学では1・2年次に主要分野の基礎を学んだのち、3・4年次に専攻に応じた専攻科目を学んでいく。女子大学や短期大学で設置されているケースが多い。多くの場合、実際に子どもと触れ合う幼稚園や保育園での実習や、音楽・造形などの演習もカリキュラムに組み込まれている。
    ■キャリアパス
    少子化傾向のなか、子どもと直接かかわる職業はどれも狭き門となっており、誰もが希望を実現できるわけではないのが実情だ。しかし、教育分野以外でも、児童書出版社、テーマパークや子供向けの企画ができる企業に就職する道もある。また、大学院で児童学分野の研究を行う人や、臨床心理士などをめざす人もいる。

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    08.芸術

    絵画(洋画・日本画・版画 等)/色彩と形で感性を表現するアートの世界へ
    ■学習内容
    絵画の分野では、洋画、日本画、版画など様々な表現技法を学び、自己の感性や視点を深めていく。洋画では油彩やアクリル画、日本画では伝統的な岩絵具や墨を用いた技法、版画では木版やリトグラフなど、多様な素材と技法に応じた制作を学ぶ。1・2年次では、デッサンや色彩理論、基本的な技法を学び、3年次以降は自身のテーマに沿った制作を通じて、個性的な表現を追求するのが一般的な学習の流れである。また、美術史や現代アートに関する学びも取り入れ、作品の背景や意義を深く理解する。
    ■キャリアパス
    絵画の学習を通じて得られるスキルは、アーティストとして独立する道のほか、デザイン、イラストレーション、アートディレクションなどの職種に活かせる。また、画廊や美術館、アートイベントの企画やキュレーション、アート教育分野でのキャリアも選択肢である。卒業後は自分の個展を開いたり、作品を販売することで活動の幅を広げることも可能である。

    彫刻/形に命を吹き込む、立体的な表現の探求
    ■学習内容
    彫刻では、石、木、金属、粘土など多様な素材を使用し、立体的な表現を探求する。素材の特性を理解しながら、造形の基礎技術を学ぶことが重要である。木彫や石彫、金属加工など、各素材に特有の技法を習得する過程で、形や質感、空間の関係を深く学ぶ。1・2年次では、基礎的なデッサンやモデル制作、彫刻技法を学び、3年次以降は自身のコンセプトに基づいた作品制作に取り組むのが一般的な学習の流れである。さらに、美術史や現代彫刻の動向も学ぶことで、作品制作の背景にある時代性や社会的意義を理解する。
    ■キャリアパス
    彫刻の専門知識と技術は、アーティストとしての独立だけでなく、公共施設や企業のアートワーク、建築物の装飾、モニュメント制作などにも活かせる。また、博物館や美術館、アートイベントの企画や、アート教育分野でのキャリアも選択肢である。特に公共の彫刻作品の制作依頼や、美術作品の修復など、専門的な技術を要する仕事も増えている。

    美術史/時代を超えてアートを読み解く知識の旅
    ■学習内容
    美術史は、絵画、彫刻、建築、工芸など、多様な美術作品を時代背景や文化的文脈に基づいて分析し、作品の意義や影響を深く理解する学問である。古代から現代までの美術作品を網羅的に学び、ギリシャ・ローマ時代の古典美術、ルネサンス、バロック、印象派、現代アートなど、様々な時代の美術作品を探求する。1・2年次では、美術史の基礎的な知識や主要な時代・地域ごとの美術動向を学び、3年次以降は特定の時代や芸術家に焦点を当てた研究を進めるのが一般的な学習の流れである。美術館や展示会でのフィールドワークを通じて、実際の美術作品に触れながら実践的な理解を深める機会も多くある。
    ■キャリアパス
    美術史の知識を活かして、美術館や博物館の学芸員、アートディーラー、アートコンサルタントとして活躍する道がある。また、美術評論家やアートジャーナリストとして、美術の動向を分析し解説する仕事も可能である。さらに、美術品の保存・修復の専門家として、文化遺産の保護に携わるキャリアも選択肢の一つである。

    美術教育/未来のクリエイターを育てる、表現力の指導者
    ■学習内容
    美術教育では、学生に美術の技法や表現方法を教えるための指導法や、教育の理論と実践を学ぶ。絵画、彫刻、工芸など幅広い美術分野の技術的な基礎を学ぶとともに、教育心理学や子どもの発達に関する知識も重要である。美術を通じて自己表現や創造力を育むための指導方法を探求し、現場での実践的な教育活動を行うためのスキルを身につける。1・2年次では、美術技法や教育の基礎理論を学び、3年次以降は教育実習やカリキュラム設計など、実際の教育現場に即した内容を学ぶのが一般的な学習の流れである。
    ■キャリアパス
    美術教育の学びを活かし、学校の美術教師としてのキャリアを選ぶことができる。また、絵画教室やアートスクール、子供向けのワークショップを運営する道もある。さらに、博物館や美術館での教育プログラムを担当するエデュケーターや、教育関連の書籍や教材の開発に携わることも可能である。

    グラフィックデザイン/視覚で伝える、クリエイティブなメッセージ
    ■学習内容
    グラフィックデザインは、視覚的な要素を通じてメッセージを伝えるためのデザイン技術を学ぶ。ポスターや広告、パッケージ、ウェブサイト、ロゴなど、多様な媒体に対応するため、タイポグラフィ、レイアウト、色彩理論、画像編集の技法を習得する。デジタルツールを活用したデザイン制作も重視され、PhotoshopやIllustratorなどのソフトウェアの使用法や、UI/UXデザインについても学ぶ。1・2年次では、デザインの基礎理論やツールの使い方を学び、3年次以降は実際のプロジェクトを通じて、より実践的でクリエイティブなデザインを制作するのが一般的な学習の流れである。また、デザインの歴史や現代のトレンドも学び、時代に合わせたデザインの視点を養う。
    ■キャリアパス
    グラフィックデザインの知識は、広告デザイン会社や制作会社、出版、ウェブデザイン、マーケティング部門など、多岐にわたる業界で活かせる。また、フリーランスのデザイナーとして独立し、企業や個人からのデザイン依頼を受けることも可能である。その他、ブランディングやパッケージデザイン、映像制作など、幅広い分野で活躍できるクリエイティブなキャリアが広がる。

    プロダクトデザイン/形と機能で新たな価値を創造する
    ■学習内容
    プロダクトデザインは、家具、家電、日用品など、私たちの日常生活に欠かせない製品のデザインを手がける学問である。デザインの美しさとともに、使いやすさや機能性、素材の選定など、製品の実用性を追求する。デザイン理論や材料工学、製品の製造プロセスに関する知識を学び、3DモデリングやCADソフトを用いた設計技術も習得する。1・2年次では、デッサンや基礎的なデザイン理論、モデリング技術を学び、3年次以降は実際のプロダクト開発を通じて、コンセプトの立案からデザイン、試作、評価までの流れを体験するのが一般的な学習の流れである。さらに、ユーザーのニーズや市場調査を通じた製品開発のプロセスも学ぶ。
    ■キャリアパス
    プロダクトデザインの学びは、家具、家電、インテリア製品、玩具、スポーツ用品など、多岐にわたる製品デザインの分野で活かされる。製品開発部門やデザイン会社での勤務、あるいは独立してフリーランスのデザイナーとして活動する道もある。また、製品デザインの経験を生かし、商品企画やプロジェクトマネジメントなど、製品開発全般に携わるキャリアを目指すことも可能である。

    ファッションデザイン/個性と時代を纏う、クリエイティブな表現
    ■学習内容
    ファッションデザインは、衣服やアクセサリーをデザインし、形にする学問である。素材の選定、色彩、シルエット、テクスチャーなどを組み合わせ、時代のトレンドや個々のスタイルを反映した作品を作り上げる。デッサンやパターンメイキング、縫製技術、ファッションイラストレーションなどの基本技術を習得するとともに、ファッションの歴史やトレンド分析を学び、時代に即したデザインを創り出す。1・2年次では、デザインの基礎理論や縫製技術、素材学を学び、3年次以降は自身のデザインコンセプトを形にし、コレクションやショーなどを通じて発表するのが一般的な学習の流れである。さらに、ブランド戦略やマーケティングの知識も学び、業界での実践的な理解を深める。
    ■キャリアパス
    ファッションデザインの学びを活かし、アパレルブランドでのデザイナー、パタンナー、スタイリスト、コーディネーターなどの職業に就くことができる。また、ファッション誌の編集者やファッションコンサルタントとして活躍する道もある。自身のブランドを立ち上げたり、独立してフリーランスのデザイナーとして活動することも可能である。

    建築・環境デザイン/空間と自然の調和を創造するデザイン
    ■学習内容
    建築・環境デザインは、建築物や都市空間、自然環境と人間の生活を結びつけるためのデザインを学ぶ学問である。建築デザインでは、建築物の美しさや機能性を追求しながら、構造や安全性にも配慮した設計を行う。環境デザインは、都市計画や景観デザイン、エコロジカルな空間設計などを通じて、持続可能な環境の創造に寄与する。1・2年次では、建築設計の基礎、図面作成、CADや3Dモデリングなどの技術を学び、3年次以降は、実際のプロジェクトに基づく設計や施工の経験を通じて、実践的なデザイン能力を養うのが一般的な学習の流れである。さらに、都市環境やエコデザインに関する知識も学び、持続可能な社会のためのデザインに貢献できる力を身につける。

    理系の建築学科と美術系大学のアプローチの違い
    理系の建築学科と美術系大学では、建築や環境デザインに対するアプローチが異なる。理系の建築学科では、物理学や構造力学、材料工学、建築基準法など、建築物の安全性や機能性に重点を置き、技術的な側面を重視して学ぶ。これにより、建物の耐震性や断熱性、構造計算など、実際に建築物を設計・施工するための理論や技術が強化される。

    一方、美術系大学では、デザインや美学、空間表現に関するアプローチが中心で、建築物や環境の造形美、空間の創造力、都市景観との調和を重視する。素材や光、色彩、形状といった感覚的な要素の扱い方や、住まい手の感性に訴えるデザインの工夫が求められる。美術系大学では、芸術的な感性と創造的なアプローチに重点を置きながら、デザインを社会や環境との関わりの中で考えることが特徴である。

    このように、理系は技術と機能性、美術系は創造性と美学という異なる側面から建築を捉え、それぞれの学びが独自の視点を持っている。
    ■キャリアパス
    建築・環境デザインの学びは、建築設計事務所やデベロッパー、インテリアデザイン事務所、都市計画会社などで活かされる。建築家として独立し、住宅や商業施設、公共施設の設計に携わる道や、都市デザイナーやランドスケープアーキテクトとして環境保全や都市開発に取り組むキャリアもある。また、エコロジカルデザインやリノベーション分野での専門家としての道も考えられる。

    イラストレーション/感性で描く、物語を伝えるビジュアル表現
    ■学習内容
    イラストレーションは、絵を通じて感情や物語、メッセージを伝える技術を学ぶ学問である。広告、雑誌、書籍、ウェブ、アニメーションなど、さまざまなメディアで活用されるため、幅広いスタイルと技法を習得する必要がある。デッサンや色彩理論、キャラクターや背景の描き方、デジタルツールを使った制作方法など、基礎的なスキルを学ぶ。また、PhotoshopやIllustratorなどのデジタルソフトの活用方法も学び、アナログとデジタルの両方で制作ができるようになることが求められる。1・2年次では、基礎的な描画技術やデザイン理論を学び、3年次以降は、個々のスタイルを確立し、テーマに沿った作品を制作するのが一般的な学習の流れである。さらに、ポートフォリオ制作を通じて、自分の作品を外部に発表する機会もある。
    ■キャリアパス
    イラストレーションの知識は、広告業界、出版業界、アニメーションスタジオ、ゲーム会社など、さまざまな分野で活かせる。フリーランスとして活動し、イラストの受注制作を行うことも多く、個展やオンラインプラットフォームで作品を販売する道もある。また、絵本作家やキャラクターデザイナー、グラフィックノベルのアーティストとして、物語を視覚的に表現するクリエイターとして活躍することが可能である。

    映像/動きと時間で描く、新たな物語の創造
    ■学習内容
    映像は、動きと音を使って物語やメッセージを表現する総合的なメディアである。映画、アニメーション、ドキュメンタリー、CM、音楽ビデオなど、さまざまなジャンルに対応するため、ストーリーテリングやカメラワーク、映像編集、音響効果、VFX(視覚効果)などの幅広い技術を学ぶ。1・2年次では、映像制作の基礎として、シナリオの書き方や撮影技術、照明、音響、編集ソフト(Premiere ProやAfter Effectsなど)の使用法を学ぶのが一般的である。3年次以降は、チームでの制作プロジェクトを通じて、企画から撮影、編集、完成までの一連のプロセスを経験し、実践的な映像制作スキルを身につけるのが一般的な学習の流れである。また、映像の歴史や映像文化も学び、クリエイティブな表現を深める。
    ■キャリアパス
    映像制作のスキルは、映画業界、テレビ業界、広告制作、アニメーションスタジオ、ウェブコンテンツ制作など、多岐にわたる分野で活かせる。映像ディレクター、カメラマン、編集者、VFXアーティスト、サウンドデザイナーなど、専門分野に特化して活躍することが可能である。また、YouTubeやSNSなどのデジタルプラットフォームで映像コンテンツを配信し、クリエイターとして独自に活動する道も広がっている。さらに、フリーランスとして様々なプロジェクトに参加することも可能である。

    写真/瞬間を切り取り、永遠の物語を描くアート
    ■学習内容
    写真は、光や構図、色彩を駆使して感情やストーリーを伝える視覚表現の一つである。風景、ポートレート、ファッション、ドキュメンタリー、広告写真など、多岐にわたるジャンルで活用され、独自の視点と技術が求められる。まず、カメラの基本操作やレンズの選び方、光の使い方、構図、シャッタースピード、絞り、ISO感度などの基礎技術を学び、被写体に応じた適切な撮影方法を習得する。さらに、デジタル編集や現像技術、プリント技法を学び、最終的な作品の仕上げ方にも取り組む。1・2年次では、写真撮影の基礎技術やデジタル編集、暗室作業を学び、3年次以降は、自身のテーマに基づいた作品制作やポートフォリオを通じて、独自の表現スタイルを追求するのが一般的な学習の流れである。また、写真史や現代写真の動向も学び、作品に深みを持たせる。
    ■キャリアパス
    写真の技術は、プロのフォトグラファーとして、広告、ファッション、報道、アート、商業写真など、幅広い分野で活かせる。広告写真スタジオや出版社、ファッションブランドの専属フォトグラファーとして活動する道もある。また、フリーランスとして自分のスタジオを持ち、個展を開いたり、オンラインで作品を発表するなど、独自の表現活動を行うことも可能である。さらに、写真講師や写真ギャラリーのキュレーターとして教育や企画の分野に進むことも考えられる。

    メディア・CGデザイン/デジタルの世界で創造を形にする
    ■学習内容
    メディア・CGデザインは、デジタルメディアを駆使して視覚的な表現を行う分野である。映画やゲーム、広告、ウェブデザイン、VR、アニメーションなど、デジタルコンテンツ制作に必要な技術を学ぶ。CG(コンピュータグラフィックス)では、モデリング、アニメーション、レンダリング、エフェクトといった技術を習得し、3Dソフトウェア(Maya、Blender、3ds Maxなど)やVFX(視覚効果)の基本的な使い方を学ぶ。メディアデザインにおいては、インタラクティブデザイン、ウェブやアプリのUI/UXデザイン、映像編集などのスキルを学ぶ。1・2年次では、CG技術やメディアデザインの基礎を学び、3年次以降は実際のプロジェクトを通じて、映像やゲーム、インタラクティブなメディアのデザインを制作するのが一般的な学習の流れである。現代メディアのトレンドにも触れ、実践的なデザイン能力を高める。
    ■キャリアパス
    メディア・CGデザインのスキルは、映画やアニメーションスタジオ、ゲーム開発会社、広告制作会社、ウェブ制作会社など、多岐にわたる業界で活躍できる。CGアーティスト、3Dモデラー、アニメーター、VFXデザイナー、UI/UXデザイナー、ウェブデザイナーなど、専門職としてのキャリアが考えられる。また、フリーランスとしてプロジェクトごとに活動することも可能で、映画やゲーム、広告など様々な分野で自分の技術を活かすことができる。さらに、メディアアートやインタラクティブなデジタルアート作品の制作を行うアーティストとしても活躍の場が広がる。

    アニメ・マンガ/物語とキャラクターで世界を創り出すクリエイティブな力
    ■学習内容
    アニメ・マンガは、キャラクターや物語を通じて感情やメッセージを表現する視覚的な芸術形式である。キャラクターデザイン、背景美術、ストーリーボード制作、コマ割り、動きの表現など、視覚的かつ物語的な表現力を学ぶ。アニメでは、アニメーションの基礎となる動きやタイミング、デジタルアニメーション技術を習得し、マンガでは、コマ割りや構図、セリフの配置など、読者を引き込むための技術を学ぶ。1・2年次では、デッサンや構成の基本、ストーリーテリング技術を学び、3年次以降は自身のオリジナル作品を制作し、ポートフォリオとして発表するのが一般的な学習の流れである。また、アニメーションやマンガの歴史や現代のトレンドについても学び、表現の幅を広げていく。
    ■キャリアパス
    アニメ・マンガの技術は、アニメーションスタジオやマンガ出版社、ゲーム会社、広告制作会社などで活かせる。アニメーター、キャラクターデザイナー、マンガ家、背景美術家、イラストレーターなどの職業が考えられる。また、フリーランスとして独自の作品を発表し、オンラインや自費出版を通じて活動することも可能である。さらに、アニメやマンガの原作・企画を手がけるクリエイターや、アニメーション監督、ストーリーボードアーティストとしてのキャリアも開かれている。

    演劇/舞台の上で命を吹き込む、生きた表現の芸術
    ■学習内容
    演劇は、言葉や身体、声、感情を使って物語やテーマを表現する総合芸術である。俳優としての演技力、脚本制作、演出、舞台美術、音響・照明など、舞台作品を作り上げるための幅広い技術を学ぶ。演技の基礎では、発声や身体表現、感情の表出方法を学びながら、役を深く理解し、観客に感動を伝える力を養う。また、脚本の読み解き方や舞台の構成、演出の技法も習得し、作品全体を俯瞰する視点を身につける。1・2年次では、演技や舞台技術の基礎を学び、3年次以降は実際の舞台作品を制作・上演するプロジェクトに参加し、チームでの創作活動を経験するのが一般的な学習の流れである。さらに、演劇の歴史や現代の演劇シーンについても学び、自己表現の幅を広げる。
    ■キャリアパス
    演劇の学びを活かして、俳優、演出家、脚本家、舞台技術スタッフなどのキャリアを目指すことができる。また、劇団を設立して舞台作品を発表したり、フリーランスとして幅広いジャンルの舞台や映像作品に関わることも可能である。さらに、映画やテレビドラマ、ミュージカルなど、演技力が必要とされるメディアに進出する道もある。また、舞台芸術の教育者や劇場の運営スタッフとして、演劇文化を支える側のキャリアも考えられる。

    音楽/音で心を動かす、普遍の表現芸術
    ■学習内容
    音楽は、メロディやリズム、ハーモニーを通じて感情や物語を表現する芸術である。クラシック音楽、ジャズ、ポピュラー音楽、映画音楽など、多様なジャンルを学びながら、自身の演奏技術や作曲能力を高めていく。楽器演奏や声楽、作曲、編曲の技術を習得し、音楽理論や音楽史についても深く学ぶ。1・2年次では、基礎的な音楽理論やソルフェージュ、楽器演奏の基礎を学び、3年次以降は専門分野に特化し、独自の音楽表現や創作活動を行うのが一般的な学習の流れである。また、現代音楽や電子音楽、音響技術についても学び、時代のニーズに応じた表現力を磨いていく。
    ■キャリアパス
    音楽の学びを活かして、プロの演奏家や作曲家、編曲家、音楽教師としてのキャリアを築くことができる。オーケストラやバンド、ソロアーティストとして活動する道や、映画やテレビ、ゲームの音楽制作に関わるサウンドクリエイターとしてのキャリアも考えられる。また、音楽プロデューサーやレコーディングエンジニアとして音楽業界で活躍することも可能である。音楽教育に携わる道や、フリーランスで楽曲制作やライブ活動を展開することも幅広い選択肢の一つである。

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    09.経済/経営·商学

    経済/理論を理解し経済的現象を分析
    ■学習内容
    大学での経済学では、まずはさまざまな経済理論を学び、応用につなげていくという流れに沿ったカリキュラムが一般的だ。理論経済学は企業や家計など個別の経済主体の行動に視点を置いたミクロ経済、一つの全体を対象に総体的な経済活動を分析するマクロ経済学が中心となる。これらの理論を応用して、さまざまな分野の経済的現象を分析するのが応用経済学だ。財政学、経済政策論、国際経済輪、公共経済論、都市経済学や、経済発展の流れをたどる経済史、各国の経済を分析する各国経済論など、扱われる分野は多岐にわたる。
    また、経済学には実証分析が欠かせない。そのためには各種のデータを統計化し分析することが不可欠で、その手法も身につけなければならない。コンピュータを用いてシミュレーションを行い、問題にアプローチするための演習をカリキュラムに組み込んでいる大学も多い。
    ■キャリアパス
    あらゆる業種の一般企業が就職先になりうるが、そのなかでも特に人気があるのが、銀行・証券・保険などの金融関係、商社、製造業だ。最近では、研究者を希望して大学院に進む人も多くなってきた。さらに、会計専門職大学院や経営管理大学院、公共政策大学院などが整備されてきている。今後は、より高度な技術を身につけ、経営管理職、コンサルタントなどをめざす人も増えていくだろう。

    経営·商学/経済活動の現場が研究対象
    ■学習内容
    経営学は企業や非営利団体など「組織」を研究対象とする学問である。企業の仕組みを解明する企業論を基礎に、企業が目的を達成するためにどのような戦略をたてるのか(戦略論)、どのように組織を構築すべきか(組織論)が、中心的テーマとなっている。さらに製品開発論、人事管理論、生産管理論、情報処理理論などでそれぞれの分野の制度や実態および有用な情報の獲得法を学ぶ。これに対し、商品流通や消費の面から経済を分析していくのが商学だ。流通論や貿易論、マーケティング論なども商学に属する分野である。また、会計学は主に企業の財務状態と利潤を巡る計算方法についての研究をする。
    経営・商学系では、経済系と比べるとカリキュラムに実学志向を反映する科目が数多くみうけられるのが特徴である。ビジネスの国際化にともない、必修科目として「経営英語」を設けるなど、実践で役立つ語学力の養成に努めている大学も数多い。
    ■キャリアパス
    経営・商学系の場合、どの分野の企業であっても大学で学んだ内容を活かせる場合が多い。このため進路は幅広い業種にわたる。また近年では、システムエンジニアやソフトウェア開発者として、IT関連企業に就職する人も増えてきている。資格試験を受けて公認会計士や税理士への道をめざす人も存在する。自分のやりたいことや自己の適性などを、入学後比較的早い時期に認識し、学ぶ必要があるだろう。

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    10.住居学/生活科学/被服/食物栄養学

    住居学/豊かな住空間・住環境の実現をめざして
    ■学習内容
    住む人の立場からみた快適な住空間を考え、実現していくのが住居学だ。人々の生活の拠点となる住居。子どもがら高齢者までが安全で健康的に、そして機能的に暮らせる空間を創造していく。例えばバリアフリーの住居、狭い敷地でもくつろげる空間づくりなどがその対象だ。また、住居を取りまく地域の文化や人間関係、都市の環境なども学問の対象となる。
    大学では住居学の基礎を学ぶとともに設計や製図の実習に重点が置かれ、コースや専攻に分かれて設計製図や材料実験、実測調査など専門性の高い実習演習に取組む。インテリアのデザイナーやコーディネーターを目指すならこの学問を学んでおこう。
    ■キャリアパス
    住宅産業では、商品の開発・研究、設計や施工管理などの職種で就職している。また建設業では、住宅のほか一般建設の設計などに携わる人も多い。このほか、キッチン・洗面所などインテリアを扱う住宅設備メーカーや、設計事務所などにも活躍の道が開けている。公務員になって住宅行政にかかわる人もいる。
    また、大学院進学では家政学系はもとより、建設系に進む人が多く、社会工学系・都市工学系の大学院に進学する人もいる。

    生活科学/広い学問領域が魅力
    ■学習内容
    生活科学は家庭生活、社会生活の向上を目的とする学問である。学ぶ範囲は幅広く、被服学・食物学・住居学・児童学といった従来からの家政系の学問はもちろん、最近では心理学、社会学、社会福祉学、政治学、経済学、教育学、情報学などの分野とも関わりながら学際的・総合的な側面を持つようになってきた。具体的には「ストレス」「不登校」「老人介護」「核家族」「夫婦別姓」「子どもの人権」といった特に現代日本で問題となっている家族関係や女性問題、消費者問題など常に生活者・消費者の視点から追求する。
    社会が目まぐるしく変化し、人々がその生き方について模索しているなか、人間の生活自体やその望ましい在り方を研究対象とする生活科学を学ぶ意義は大きい。
    ■キャリアパス
    卒業生の進路は、食品会社やアパレル関係、設計事務所など様々な業種に及ぶ。そのほか、高齢者や子どもに関する福祉、家庭や職場での女性問題や消費者問題などを担当するカウンセラーなどの職業に就く人も多い。また、様々なサービス業でも、学んだことを幅広く活かせるのが利点である。

    被服/ファッションを総合的に科学する
    ■学習内容
    被服学は、「衣」の全体をあらゆる側面から総合的に研究する学問である。洋服のデザインや製造方法から、素材の開発や服飾の文化まで、その対象は幅広い。
    大学での研究内容は、服飾デザインを中心とした色彩学やテキスタイルデザインのほか、服飾の歴史や文化、マーケティングや消費行動を学ぶ人文・社会科学的分野と、素材の性質や化学的構造を学ぶ理系的分野がある。
    実習実験も多く、実際に服をデザイン作成する実習のほか、汚れの洗浄・漂白・染色に関する実験や繊維の識別・製造実験、染織加工実験など化学的要素の強い実験も組み込まれている。また、アパレル(衣服・既製服)のデザインや生産工程を効率化するためのコンピュータ基礎知識を学ぶアパレルCAD演習なども開講されている。
    ■キャリアパス
    デザイナー、パタンナーといったクリエーターから、商品企画・管理、品質管理、試験・分析、販売・仕入れ、マーケティング、消費者相談室など、専門的な知識や技術を活かした分野での活躍が目立つ。また、大学院を設置する大学もある。もっと専門的に学びたいと思う人たちに門戸を開いており、研究内容も多様化している。

    食物栄養/食のスペシャリストをめざす
    ■学習内容
    生命と健康の基本となる食物。食物・栄養学では食品・栄養・調理の3分野を総合的に学習・研究する。1年次は食品学、栄養学、調理学の基礎と理論を学び、2年次以降、専門科目の講義が始まるのが一般的。食素材の特徴や食品の生産・加工・貯蔵、食品の安全性や調理方法に関する講義のほか、生活習慣病、肥満、貧血、骨粗鬆症など食生活に関連した慢性的疾患の予防や健康増進などさまざまなテーマが取り上げられている。最近では、食品の化学組成の分析や栄養素の分子レベルでの機能解明が進み、食物学の研究も化学系や物理学系、生命科学系と共通のアプローチを採るようになっている。
    4年闘を通して実習や実験が多いのもこの学系の特徴。調理学実習、栄養学実習をはじめ、食品衛生学実験など長時間にわたる実験も多い。学問的には化学に基礎を置くものも多いため理科を重視している大学が多いのが特徴だ。
    ■キャリアパス
    卒業後は、大学で学んだことや、取得した資格・免許を活かした進路が開かれている。管理栄養士や栄養士は、病院、福祉施設、食品メーカーの研究室・商品開発分野などで欠かせない存在として活躍している。また、大学院に進み、研究をさらに深める人もいる。

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    11.人間科学/スポーツ・健康科学/環境学/情報学

    人間科学/「人間」について総合的に研究する
    ■学習内容
    現代の人間社会がかかえるさまざまな問題を解決するため、従来の学問の枠組みにとらわれず、総合的科学的に「人間」を捉え、問題解決の道筋を見出そうとして生まれたのが人間科学だ。人間を研究対象とするため、取り上げるテーマもアプローチ方法もさまざま。心理学、社会学、教育学を中心に、哲学、文化学、生物学、医学など多岐にわたる。人間科学は多様な学問が結びついてできた学際的分野といえ、人間への関心とバランスの取れた知識と感性、幅広い視点が要求される学問である。大学では、「人間」について何を、どのように研究するかによって、専攻分野や講座が分かれている。1年次には共通の基礎科目を学び、2年次以降各専攻に分かれるのが一般的だ。学際的分野という人間科学の性質から、どの専攻に進んでも他専攻の授業を履修できるように柔軟なカリキュラムとなっているところが多い。
    ■キャリアパス
    国際機関やNPOの職員となる人、また、介護福祉士や認定心理士などの資格を取得して、心理・福祉関係の専門家となる人も多い。スポーツ科学を学んだ卒業生はスポーツ・レクリエーション関連企業などに進むケースがある。
    少数ではあるが大学院へ進学し、研究職をめざす人もいる。

    スポーツ学・健康科学/スポーツと健康に科学的に取り組む
    ■学習内容
    スポーツ健康科学は体の仕組みや競技能力の向上だけでなく、科学的アプローチで人間そのものを追求する学問だ。生涯学習や健康に対する関心の高まりからスポーツに関するニーズは広がっている。競技スポーツだけでなく、生涯スポーツ、健康づくりのスポーツなど多様なスポーツが注目されている。
    研究領域は4つに分けられる。生涯にわたる健康、体力の保持・増進に必要な科学的知織を持った指導者・研究者の育成を目的とするのが「学校体育系の分野」である。競技としてのスポーツを科学的に分析、運動方法や効果的なコーチングなどを研究するのは「トレーニング科学系の分野」だ。ライフスタイルの一要素としてのスポーツを社会学的観点から見るのは「社会体育系の分野」。地域社会での指導者の育成もめざす。また、衛生管理やスポーツによって引き起こされる疾患・障害についての研究、予防法、リハビリテーションなど医学的視野も含んだ観点から探求が行われているのが「健康科学・スポーツ医科学系の分野」だ。
    ■キャリアパス
    卒業生は体育施設での指導員、トレーナー、民間のスポーツクラブのインストラクターなど、幅広い分野で活躍している。
    スポーツ用品メーカーなどの一般企業への就職は増加し、職種は広がっている。
    学部での研究をさらに深めようと大学院に進学する人も少なくない。

    環境学/環境問題のスペシャリストをめざす
    ■学習内容
    20世紀の人間の営みは、自らの生活環境を急速に悪化させてきた。たとえば、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、海洋・大気汚染、環境ホルモンなど、枚挙に暇がない。しかも、こういったグローバルな問題だけではなく、ゴミ処理やリサイクルなどのローカルな問題まで扱う分野は幅広い上、経済や法律などといった関連分野と複雑に絡み合い、問題はより複雑化した状況にある。
    したがって、環境学が扱う分野は自ずと多岐に渡る。これらの問題に対処できる専門家を育成するために、近年各大学で環境系の学部・学科が増設されている。環境問題については、従来は主に理系の学部や学科で研究されてきたが、近年は人文・社会科学などの文系分野でも研究が進んでいる。たとえば、人と生活環境の相互作用を考察することで、人間社会と自然との調和や共生を研究する学科や、企業や地方公共団体・国といった社会の仕組みを捉えながら、法制度の在り方や環境法などを考察する学科がある。
    つまり、これら環境問題への関心や意識の高まりに伴い、また幅広い分野にまたがる環境問題を研究するために、文系・理系の枠を超えた文理融合的な取り組みや、従来の学問分野を超えた学際的な取り組みが進んでいる。
    ■キャリアパス
    環境という分野が文系・理系にまたがっているため、就職先も、また職種・業種ともに多岐に渡っている。行政機関や教育機関、国連などの国際機関、特殊法人や財団法人のような公益法人、環境NGOといった国内外の民間組織など、様々な場での活躍が期待できるだろう。

    情報学/情報を様々な角度から探る
    ■学習内容
    携帯電話やパソコン、インターネットの普及など、情報関連の分野は近年急速に発展している。情報通信産業は常に新たなサービスを展開し、その技術は日々進化している。しかしその一方で、情報機器によるトラブルが急増しているという問題点も浮上している。こうした時代の中で、従来の主流であった理系学部だけではなく、情報を用いて様々な領域を研究する学際的な文系の情報系学部が注目されつつある。
    理学部では数学や物理学の知識と基礎理論を基に学び、工学部ではコンピュータに関する研究を基にして学んでいくが、一方の文系学部では、様々な領域の課題を「情報」という観点から捉えていく。そのため文系学部であったとしても、コンピュータをはじめとした情報技術の理論や知識を学び、情報収集や解析など実践的な活用が不可欠なので、文系・理系の枠組みを超えて総合的に学ぶことが求められている。こういった既成の枠組みを超えていく流れは、同様に理系学部にも及んでいる。
    近年、情報分野のキーワードとして、「ユビキタス・コンピューティング」という言葉が用いられるが、「ユビキタス」とは、ラテン語で「至るところにある、遍在する」という意味である。すなわち、いつでもどこでもコンピュータを利用できる環境にあることをいう。これから「ユビキタス社会」を迎えるにあたって、情報学の重要性はますます高まっていくだろう。
    ■キャリアパス
    学系分野同様、将来の職業についても非常に幅広い。情報に関する知識を持つ人への社会的需要は高く、就職できる業界・業種も多岐に渡っている。コンピュータ関連、情報関連は言うまでもなく、メディアやバイオ関連など、新たな産業分野への進出も増加しており、様々なジャンルでの活躍が期待されている分野の一つである。

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    12.理学

    数学/長い歴史をもち活発に成長する学問
    ■学習内容
    数学は自然科学の理論を根底で支え、すべての科学を表す「ことば」として古くから社会の営みにかかわってきた学問だ。現代社会では欠かせないコンピュータも数学の論理演算の応用であり、様々な研究開発分野における基礎となっている。
    大学での数学は、代数学、幾何学、解析学の3つの専門分野に分けられる。これらを理論として追求する「純粋数学」と数値解析、統計、計算機論など社会科学、工学分野やコンビュータと関連しながら発展している「応用数学」「情報数理学」に分かれている。カリキュラムを見ると、1・2年次には、代数学、幾何学、解析学の分野で必要となる基礎科目を学ぶ。講義にはたいてい演習が組み合わされ、問題を解きながら思考力を鍛えていく。また数学的な問題をコンビュータを用いて解く方法を理解するため、コンピュータ実習や計算機演習などの授業も必修だ。3年次になると、より専門的な幾何学、解析学など純粋数学の世界を見渡す科目や、数理統計学をはじめとする応用数学系科目も展開され他分野への応用力を身につける。
    ■キャリアパス
    数学の専門知識や柔軟に思考できる能力、論理的思考力を活かす職業が増えている。例えばコンピュータのシステムエンジニアやプログラマーとして、製造業、情報通信などのサービス業や金融業界などに就職している人が多い。
    最近では、大学院への進学率が高くなっている。修士課程修了後は一般企業などへの就職が大半だが、大学の研究者をめざす人もいる。

    物理学/自然科学の法則を探る物理学
    ■学習内容
    物理学は、自然界で起きているさまざまな出来事を系統的に理解することを目指し、宇宙のような無限世界から、分子、原子、素粒子などのミクロの世界まで、自然界で起こるさまざまな法則を解き明かし、基本的・普遍的な姿で自然を捉えようとする学問だ。いろいろな公式を覚えて問題を解く、という高校時代の物理とは違い、大学では公式や法則そのものの成り立ちを考えることからスタートする。そして、物理学を理論と実験の両面で検証し、研究を深めることで物理学的思考力を養っていく。大学の物理学では、まずは現代物理学の基礎となる力学、電磁気学、量子力学、統計力学、物理数学などの修得が重要視される。また、物理学にはコンピュータの知識も不可欠だ。1・2年次にはこれらの科目を実験や演習を交えてじっくり学ぶことになる。3年次になると、原子核物理、物性物理、計算物理など物理学の中心分野を学び、4年次には研究室に所属し、教授や大学院生の指導を受けながら卒業研究に取り組むのが一般的だ。
    ■キャリアパス
    一般企業への就職では、電子機器、機械などのメーカーをはじめとして、情報関連分野から金融に至るまで多岐にわたる。
    なお、他の理学系と同様に大学院への進学者が半数近くいる。進学の目的は、修士課程を終了した後に企業の研究部門に就職することを見据えている場合が多い。また、さらに研究者をめざし、大学や国の研究機関に就職する道もある。

    地球科学/地球を広大なスケールで研究
    ■学習内容
    地球そのものの物質、構造、環境など気象や海洋も含めてさまざまな現象を研究する。地質学、鉱物学、地球物理学、古生物学、地震および火山学、海洋学、気象学などの分野がある。グローバルな視点でミクロスケールからマクロスケールまでの理論、観察、分析、調査技術を取得し、その成果を自然災害の軽減や、環境保全などに活かすべく総合的なアプローチで研究が行われている。この系統でも観察や実験・実習が重視される。野外での地層観察や岩石鉱物の採集といった実習をはじめ、電子顕微鏡を用いた観察や海外での現地調査などさまざまな研究が行われる。
    ■キャリアパス
    データ分析の能力を活かして地質検査会社などに就職する人や、建設コンサルタント、環境計画コンサルタントとして活躍する人が多くなっている。
    また、他の理工学部系と同様に、大学院へ進学する学生が多い。学生の半数前後が修士課程へ進学する大学も多く、そこから研究者をめざす学生もいる。

    化学/物質の性質を実験で体得
    ■学習内容
    化学とは、存在するすべての物質(もの)に関する学問である。身の回りに存在する物質の構造、性質、反応と変化の過程を調べ、それをもとに人間の暮らしに役立つ新しい物質を創り出すことをめざしている。大学で学ぶ化学は有機化学・無機化学、物理化学、分析化学、生物化学の5つに大別される。1・2年次には各分野の基礎科目と化学と密接な関係にある物理学、生物学、数学を学ぶ。また講義だけではなく、基礎実験やコンピュータ演習などで実験分析技術を身につける。
    3・4年次になると、専門選択科目が増え、さらに高度な実験に取り組む。カリキュラムのなかで、実験が占める割合が高いのがこの学系の特徴のひとつ。高校時代の化学実験は、方法、手順を把握するために、すでに明らかになっている結果に至る道筋をなぞるものがほとんどだったが、大学では自分で立てた仮説を証明するために実験を行うので、思い通りの成果が簡単に出るわけではない。逆に、実験の過程や結果から全く別の問題を発見する場合もある。根気はいるが「スリルに富んだ」学問でもある。
    ■キャリアパス
    卒業後の進路は幅広く、一般化学産業以外にも、製薬・化粧品メーカーのほか、食品などの商品開発を行う企業にも就職している。
    技術者や研究者など、専門家として就職を希望する場合、大学院で専門性を深めることになる。卒業後、大学や国立機関の研究職、あるいは民間企業の研究所などで研究者として活躍する道がある。

    生物学/研究対象は微生物からヒトまで
    ■学習内容
    生物学とは細菌や微生物から植物、動物、ヒトにいたるまで、地球上のあらゆる生物を対象に、生命現象の解明を目的とする学問である。動植物の生育と環境の関わりを研究する生態学、生物の形態や構造に関する形態学など従来からある学問分野のほか、急速に進歩しつつある分子生物学的手法を用いて、分子・遺伝レベルで解明しようとする遺伝学、生理学、分子生物学、生物化学などの分野が発展してきている。大学では、まず1・2年次に化学・生物の基礎をじっくり学んだのち、自分の研究したい分野へ進んでいく。いずれの分野も、理論だけでなく観察や実験が研究の基本となるため、実験・実習が多く、野外調査や実習をカリキュラムに組み込んでいる大学も多い。
    ■キャリアパス
    大学院に進む人の割合が高く、卒業生の半数以上が進学するというケースも少なくない。
    主な就職先としては、学んだ専門知識や実験技術を活かせる製薬・食品・化学工業関係の研究職が挙げられるが、近年はMR(医薬情報担当者)としての需要も増えている。卸・小売業、マスコミ、サービス、コンピュータ関連会社なども比較的多い傾向にある。また、官庁や研究所などに進む人もいる。

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    13.工学

    機械工学/工学の基盤を支える機械工学
    ■学習内容
    機械工学は、機械技術の原理や方法論を系統的にまとめた学問。機械の設計だけでなく、運用するための効率的な生産システムや、自動化・省力化を図る方法も機械工学の大切な研究領域だ。
    機械工学の研究分野は大きく「材料系」「熱・流体系」「機械振動・制御系」「加工系」の4つに分けられる。「材料系」は材料の特性や強度、機械に適した材料の選択法や新素材の開発が研究テーマである。「熱・流体系」は自動車やロケットなどのエンジンや発電プラントなどに関連する分野。熱の発生、移動、遮断法などを研究する。「機械・振動・制御系」では機械の振動・制御技術、「加工系」では精密加工や切断加工、溶接技術を扱う。これら伝統的領域に加え、ロボットや医療関連の研究も盛んになっている。
    大学では1・2年次に数学、物理学、力学、製図学など基礎科目の修得に力を入れる。とくに、機械工学のベースである材料力学、流体力学、熱力学、機械力学の4力学をみっちり学ぶ。3年次以降は、この4力学を実験・演習でさらに深め、設計演習よりも高度で専門的になる。
    ■キャリアパス
    自動車、家電など、機械・電気関連メーカーへの就職が中心になるが、生産技術などの知識を活かし、就職先が建設、運輸、食品、科学をはじめ製造業全般にまでまたがっているのもこの学系の特徴である。
    企業の研究開発職として就職する人の多くは大学院修了者である。したがって、大学院へ進学する人も少なくない。将来、研究職を希望する場合には、大学院への進学も検討してみよう。

    電気・電子工学/電子の利用法を研究
    ■学習内容
    電気工学、電子工学はいずれも電気を担う電子を扱う学問であるが、電子のとらえ方に違いがある。電気工学では電子の流れ、つまり「電流(電気)」をエネルギーとしてとらえ、効率の良い発電や電力輪送、電動機の制御や応用などを研究する。具体的にはリニアモーターカーでおなじみの超電導やデジタル映像処理授術、太陽光発電など、未来技術のカギを握る研究も数多い。
    一方、電子工学は「エレクトロニクス」ともいい、電子を「情報伝達の道具」としてとらえる。LSl(大規模集積回路)などの電子デバイスの新材料の開発やバーチャルリアリティなど、コンピュータのソフト・ハード面の開発、半導体レーザーや光ファイバーを用いたネットワーク技術など電子の性質の応用に関するさまざまな研究を行なっており、現代先進技術の基盤を支えている。
    ■キャリアパス
    電気エネルギー工学、計測・制御工学など各分野に関連する広範囲な知識を修得することから、活躍できる分野も多岐にわたる。電気主任技術者、電気通信主任技術者など高度な資格取得に便宜が図られている大学も多い。
    多くの人が、技術開発が目覚ましい上記のような業種に就くほか、より高度な知識や技術を修得するために大学院に進学する人も多い。さらに博士課程に進学し、大学研究機関に就職する道もある。

    生物工学/生物の機能を工学で利用
    ■学習内容
    生物学の基礎研究によって解明された生物の機能や仕組みを活かして、産業や医学・薬学への応用をめざす学問。例えば、微生物による産業廃棄物の分解や、遺伝子組み換えを施して微生物に有用な物質を作らせることなどがこの分野の研究だ。
    生物工学は遺伝子工学や細胞工学といった基礎技術をもとに研究がすすめられる。「遺伝子工学」では遺伝子組換え技術を用いた遺伝子の構造解析や遺伝子操作を行なう。「細胞工学」では細胞同士を融合させ雑種細胞を作ったり、細胞内で有用物質の大量生産を行う。これらの技術と他の工学的技術を組み合せて実用的なバイオ技術を開発していく。生物工学の活用範囲は医薬、食品、化学、発酵の諸工業分野から環境保全にも及ぶ。
    ■キャリアパス
    生物工学の知識や経験を活かせる医薬品・食品・化粧品などの企業に就職する人が多い。研究職では、修士以上の学位を求める企業が多く、また、専門性を求められるため、大学院の進学率は高い。
    テクニカルエンジニアやシステムエンジニア、シンクタンクなどの分野へ進む人もいる。

    土木・環境工学/快適に、安全に暮らせる街づくり
    ■学習内容
    「土木工学」は、英語で「CivilEngineering」と呼ばれているように、「市民の暮らしのための工学」である。道路や橋・トンネルといった交通施設や発電所・ダム・公園などの構造物を対象に設計、建設、運用、管理を学んでいく。人々が快適で安全に暮らせる街づくりが土木工学の使命だ。
    土木工学の扱う対象は環境と密接な関わりを持つ。そこで登場したのが「環境工学」という分野で、自然科学、社会学、情報工学などの分野もあわせ、環境に配慮した都市や地域の基盤整備を進める学問領域である。地球規模の環境から、住宅周りなど生活環境まで扱う幅は広い。
    カリキュラムは、水理学、土質力学、構造力学などの専門基礎科目から都市計画学や地球環境工学まで多彩な科目で構成されている。
    ■キャリアパス
    土木工学系卒業者は、ゼネコン(大手の総合建設会社)で橋・道路・ダム・トンネルなどの大規模プロジェクトに従事する人が多い。また、国土・都市計画学などの専門分野を活かし、都市開発の仕事に携わる道もある。
    一方、環境工学系卒業者の就職先は、建設会社、設計事務所、各種メーカーなどがあり、幅広い分野で活躍中である。また、環境分野に限らず、総合的な素養や能力を活かして、様々な分野で活躍している。

    航空・宇宙工学/工学の花形航空・宇宙工学
    ■学習内容
    航空機などを扱う航空工学、ロケットや人工衛星、宇宙ステーションなどを扱う宇宙工学からなる。その開発・設計・製造・運用する理論を学ぶため、機械工学、通信・情報工学、材料工学、物理学等を融合した総合的な学問でもある。
    航空・宇宙工学は大きく分けて空気抵抗や浮力について研究する「流体力学」、機体の構造や般計に関する「構造力学」、航空機やロケットの飛行に必要な推進力を研究する「推進工学」、操縦性能や飛行の安定性を追求する「航空・制御工学」の4つから成り立っている。これらの基礎的な分野を軸にしながら、学習すべき内容は非常に広範囲にわたる。また、進歩が著しい分野だけに、最先端の技術にも触れることができる。
    入学後は基本となる数学や物理をみっちりと勉強し、専門課程になると宇宙や航空に直接関連した科目を履修する。華やかにみえるこの分野だが、実は地道な研究の連続。コツコツと努力を積み重ねることができる人が向いているだろう。
    ■キャリアパス
    ほかの工学系と同様に大学院志向が強く、なかには学部卒業生の7~8割が進学している大学もある。研究職や大学教員をめざす人が多いのも特徴といえるだろう。
    上記のほかに、精密機器メーカー、鉄道関連企業、ソフトウェア開発企業など、研究を通じて得た知識が活用できる職種は幅広い。パイロットや航空整備士などの資格取得をめざす人も多いようだ。

    通信・情報工学/ITの進展を担う
    ■学習内容
    インターネットが社会の基幹を形成するまでに発達し、情報・通信技術は現代社会において不可欠なものとなっている。情報を伝達する技術的手段を研究するのが通信工学だ。電話線など従来の有線技術だけでなく、光ファイバーや無線技術との連係によって、情報をより速く、効率よく、より安全にやりとりするための研究が続けられている。情報工学では情報の有効活用のために欠かせないコンピュータについて、通信工学も含め総合的に学ぶ。ハードウェアに近い分野から、プログラム理論や数値解析のようにソフトウェアに近い分野、さらにロボットや医療などへ応用する分野まで幅広く扱う。大学では1・2年次にコンピュータの基本構造、演算処理と回路の設計、プログラミング言語などを学ぶ。3年次以降はハード系とソフト系に分かれ、それぞれの専門分野を研究することが多い。
    ■キャリアパス
    どのような業種においても、情報化・通信環境の充実は非常に重視されており、通信・情報工学系出身者に対する期待が大きい。システムエンジニアやプログラマーなど直接情報にかかわる職業はもちろん、あらゆる分野の企業に道が開かれているといえる。
    また、大学院に進学する学生も増加しており、大学によっては進学率が7~8割に達しているケースもある。大学院修了後はIT関連企業などで研究・開発に携わる。

    建築学/科学と芸術の融合
    ■学習内容
    建築学は、人々が「集い」「住まい」「活動する」ための建物や場所を創り出す創造的な学問だ。科学であると同時に芸術としての側面も併せ持っている。単に建築物をつくる技術だけでなく、建築物をとりまく環境、文化、福祉、思想などを組み込み、機能美と芸術美をも追究し、暮らしやすい環境や住まいをクリエイ卜していかなげればならない。
    建築学は大きく4つの分野に分かれる。「建築史・意匠」分野は建築の歴史とデザインだけでなく自然科学・哲学・美学・社会学などさまざまな分野と密接な関係をもつ。「建築構造・材料」分野は、建物が倒れないための仕組みやその原理の追及を行う。「建築環境・設備」分野は、照明や空調・給排水のみにとどまらず、都市全体・地球全体のエネルギー分野についても学ぶ。「都市計画・建築計画」分野は、都市や建物の計画に主眼を置いたもの。最近では環境面を重視した研究も盛んで、例えばバリアフリー住宅やエコハウスなど、地球や人に優しい住空間づくりを目指す研究はますます進みそうだ。
    カリキュラムは、それぞれの分野を系統立てて学んでいくが、実験や実習に重点を置く大学が多い。設計に関わる部分では、CAD(コンピュータ援用設計)などコンピュータ技術を学ぶ実習演習も用意されている。4年次には研究室に所属して卒業設計を行う。
    ■キャリアパス
    大学院への進学率が高くなってきており、そのうえで建築家をめざす場合が多い。
    このほか、都市を計画するアーバンデザイナー、環境デザイナーなどの職業に就いたり、大企業の建築部門に所属する人もいる。
    また、建築関係への就職以外には、コンサルティング会社や広告関係、さらには、金融関係や不動産関連企業などへ進む道もある。

    デザイン工学/つかいやすく環境に優しい製品をめざして
    ■学習内容
    現在の工業製品は、性能の向上が求められる一方、デザインの重要性も問われている。デザイン工学は、その名の通り工業製品のデザインと機能を追求する学問。ただ斬新な形を追うのではなく、使う人の視点に立ち、より使いやすく安全な形を研究、創造する。最近では環境問題に配慮した材料や製品の開発が行われており、これに応えたデザインも求められている。
    工業製品と人間と環境の関わりを追求していくため、生活や社会・経済の枠組みとも深く関わる。大学ではデザイン造形、人間工学、生理人間学、デザイン心理学といった他の工学系学科とは異なる講義も開設されている。
    ■キャリアパス
    ほかの理工学系学部・学科と同様、より高いレベルの研究を行いたいと希望する学生が多く、大学院へ進学する卒業生の割合は高い。
    理学・工学双方の内容を横断した知識を持つという特性があり、応用も利くので、卒業後の進路は幅広い。電気・電子機器、通信・コンピュータ関連、金属、鉄鋼、自動車など、様々な分野で研究者・技術者として活躍している。
    また、データ分析能力を活かし、金融や保険業界など一見すると畑違いな分野で活躍している人もいる。

    材料工学/技術革新を呼ぶ新素材をつくる
    ■学習内容
    私たちの身の回りにある多くのモノ。それらを構成する材料を探究するのが材料工学だ。材料の構造とその機能を工学的に解明し、モノづくりに最良の材料を開発することが使命といえる。材料を大まかに分けると金属材料、有機材料、無機材料、それらを組み合せた複合材料などがある。「金属材料」は、鉄、アルミニウム、チタンを代表とするもので形状記憶合金やクリーンエネルギーである水素を安全に貯蔵する水素吸蔵合金などの開発が進んでいる。「有機材料」は炭素を骨格とした物質であり、代表的なものにたんぱく質等の天然有機化合物や合成繊維等がある。「無機材料」はセラミックス材料とも呼ばれる分野だ。こうした材料の開発や機能強化には「ナノテクノロジー」が基盤になっている。大学では1・2年次に物理、化学、数学とともに、金属や有機、無機材料についての基礎知識を学ぶ。その後、専攻に応じてセラミックス材料学、電気・磁気材料学、触媒化学、宇宙材料工学などを履修する。演習や実験、工場見学等の実践的な科目も多く、実験や分析に必要となるコンピュータ情報処理に関する授業も重視される。
    ■キャリアパス
    材料工学系の学生はほかの工学系と同様に大学院進学率が高い。研究や開発に求められる知識や経験の高度化に伴い、専門性を活かした仕事をするために大学院に進むことは必須と考える傾向が強まっており、学部卒業生の半数以上が大学院進学者という大学も珍しくない。
    大学院修了者は主に、各種研究機関、企業の開発・研究部門などで研究者およびエンジニアとしての活躍が期待されている。

    応用化学/産業界を革新する化学技術
    ■学習内容
    化学の理論や知識を活用して人間生活に役立つ新しい物質を開発研究する学問である。その守備範囲は医療や農業、食品、工レクトロニクスなど幅広く、数年後には実用化されることをめざした実践的な研究が行われている。
    応用化学の一つのテーマとして挙げられるのが新素材の開発。高分子材料、生体材料、セラミックスなどがあり、携帯電話に使われている高効率なリチウム電池の電極もこの分野で開発された材料が使われている。また、化学物質のなかには有害物質が存在することもある。そのため、最近では環境保全技術も重要な研究対象となっている。例えば、ダイオキシンなどの有害物質の分解作用を持つセラミックス系光触媒物質、分解して土に変わるプラスチックなどが開発されている。
    大学では、1・2年次において物理化学、有機・無機化学、分析化学などの基礎科目を学ぶ。また、1年次から実験の比重が高いこともこの学系の特徴のひとつだ。3年次以降は、高分子化学、触媒化学、反応速度論などの講義や実験、演習を履修し、卒業研究に取り組む。
    ■キャリアパス
    化学工業、高分子、セラミック関連の企業への就職が一般的だが、最近では、環境問題への関心の高さから、環境保護、エネルギー関連の企業に進む人もいる。それらの研究所や工場で、研究者・技術者として新しい製品や生産技術を開発する人が多くを占める。
    そのほかに、国立の研究機関や大学などの教育機関に研究の場所を求めている人もいる。

    船舶・海洋工学/広い知識を持つ海洋のエンジニアを育成
    ■学習内容
    船舶・海洋工学の扱う研究分野は幅広い。船舶をはじめとする構造物の設計・建造・補修から、船の安全な航行・運行システム、効率的な海上物流、あるいは海洋現象のメカニズム研究から資源採掘など海洋開発の手法の構築、さらには海洋環境の保全に至るまで、そのフィールドはまさに地球規模である。いわば、海に関するスペシャリストを育成する学問分野である。
    学問領域は大きく船舶系、海上海洋系、環境系の3つに分けられる。
    船舶系では、船舶の設計・建造など造船技術を中心に学ぶが、海洋開発のための各種構造物や大型橋脚、大型の陸上構造物なども含まれる。船舶は様々な機械や電子制御装置などを備え、省エネルギーと環境保全の視点から動力や設備・機器システムを運用する、それ自体が大きなプラントともいえるため、機械・電気・制御・流体など幅広い工学分野を総合的・系統的に学んでいく。
    海上海洋系は、海上空港、海洋リゾート、資源開発など主に海洋開発に関する分野と、海上輸送システム、国際物流・ロジスティクスに関する分野を含む。海を守りながらエネルギーを持続的・発展的に利用するシステムや、安全で効率的な輸送システムを研究する。
    環境系は、風・波動・潮流など海洋をめぐる自然現象を解明し、環境保全と人間との共生という課題を軸に、海洋環境・資源管理・水域利用などについて、その方法や技術を広い視点で学んでいく。海難事故による原油流出の影響の研究や、魚類・海藻などの水産資源に関する研究を行っているところもある。
    ■キャリアパス
    総合工学としての側面も持つこの学系への求人は多い。造船、海運業など船舶の製造や海上輸送に関連する分野への就職はもちろん、自動車、建設、鉄鋼、航空、情報処理、通信、電気機械などの分野への進出も多く、多方面で活躍している。
    一部の大学では船員養成課程を設けているところもあり、卒業後に海技士免許を取得し、船舶職員として活躍する人材も輩出している。

    資源・エネルギー工学/環境問題を探求する
    ■学習内容
    私たちの生活を維持・向上させるためにはエネルギーが必要不可欠であるが、地球規模のエネルギー・環境問題が深刻になりつつある今日、石油・天然ガスなど化石資源の生産・消費を維持する一方で、次世代エネルギーの開発も急務となっている。そこで、化石資源だけでなく、風力や太陽光、バイオマスといったクリーンエネルギーを有効利用することによって、エネルギー消費と自然環境とが調和した、高効率エネルギーシステムの構築をめざすのが「資源・エネルギー工学」である。
    資源工学は、工学のなかでも長い歴史を持つ学問分野で、前身は採鉱・冶金(やきん)学や鉱山学などである。資源の探査・開発・処理や環境保全という従来の資源工学で取り扱う分野に加え、資源の開発と利用に伴う環境問題、自然災害に関する予測・予防や資源リサイクリングなどに関しても、地球的規模での将来を視野に入れた総合的研究・技術開発を行っている。
    一方、エネルギー工学では、エネルギーの生産と利用に関する基礎研究とその応用に取り組んでいる。例えば、エネルギーを有効かつ安全に利用するための最適プロセスとその機器の開発、基礎原理の解明など、高品位エネルギー変換システムについての新しい技術の開発をめざし、様々な実験的研究や解析を行っている。
    このように、資源・エネルギー工学系では、広い学域にわたる専門知識を融合させてエネルギー・環境問題を克服することを目標とし、資源の開発やリサイクル、省エネルギーなど持続可能な社会システムの構築を研究している。
    ■キャリアパス
    資源工学を学んだ学生の就職先としては、地質学、鉱物学などの知識を活かして、石油、ガス、地質コンサルタント会社などがある。また、材料工学などの知識を活かして金属工業、鉱業などの分野にも進んでいる。エネルギー工学を学んだ学生の就職先は、ガス、電力、自動車産業などクリーンエネルギーの開発をめざす企業や、重工業・電機などの製造業が中心となっている。さらに両学系とも専門分野で学んだ知識を活かして、研究機関で活躍している人や大学院進学をめざす人も多い。

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    14.農学/水産学

    環境科学/「環境」をさまざまな角度から研究
    ■学習内容
    環境科学は環境問題について取り組む学系である。環境問題は温暖化などのグローバルな問題からゴミ処理やリサイクルといったローカルな問題まで、扱うテーマは幅広い。
    環境をテーマとした研究はこれまで生物学や農学など自然科学の分野で行われてきたが、最近では人文・社会科学系でも環境問題に取り組む学部学科が増加しつつある。たとえば人間社会と自然との調和・共生のための幅広い知識を学ぶ学科や、社会を構成する様々な要素を広い視野でとらえ、法制度のあり方や環境法を考える学科などがある。また、理工系でも環境に関わるさまざまな環境を解析する「環境数理学」、マルチメディアを駆使して環境問題にアプローチする「情報環境学」などの新たな学問領域が注目を集めている。
    ■キャリアパス
    大学卒業後の進路として、就職、大学院進学などが挙げられる。就職に関しては、環境系の学問分野が理系・文系にまたがっている性格を反映して、製造、建設など就職の際も職種・業種ともに多岐にわたる。
    そのほかに、国連などの国際機関、特殊法人、財団法人のような公益法人、環境NGOなど国内外の民間組織が挙げられる。

    能楽・農芸化学/バイオ技術の進展で多様化する研究領域
    ■学習内容
    農学は栽培植物の生産力・品質の向上を発展させるための技術と理論を追求する学問。その研究分野は幅広く、遺伝、育種、栽培、作物、土壌といった基礎研究はもとより、バイオテテクノロジーやマーケティング、さらには環境問題など、他の学問分野までをカバーする学際的傾向が強まっている。
    農芸化学は農業生産に関わる多様な問題を化学によって解決することをめざす学問分野。生物が持つ遺伝、自己抑制、物質代謝などの機能を解明し、それを他に応用する技術を開発する。研究対象は農産物、昆虫、キノコ、微生物と多種多様だ。遺伝子組換技術による新しい安全な農作物なども研究テーマになっている。
    大学では、農学原論や生物学、有機化学、土壌学などの基礎科目を勉強した後、専門性の高い研究に取り組んでいく。実験や実習のウエイトも高い。とくに農学では農場でのフィールドワークも重視されている。
    人口増加による食糧危機への懸念や地球環境の悪化がもたらす農産物への影響など、多くの問題が農業を取り巻いている現代において農学研究がもたらす成果への期待は大きい。
    ■キャリアパス
    農学分野で取得した専門知識を活かして、農業試験場をはじめ、研究機関などへの就職を希望する人が多い。民間企業への進路は、肥料・農薬などの開発・生産を行う企業や、食品関連企業などがある。農芸化学系では、食品関連企業や化粧品、医薬品、化学工業などの専門職や研究職に就く人が多い。両系統とも、大学院進学率が高く、修士課程さらに博士課程へと進み、研究者をめざす人も多い。

    農業経済学/世界の人々が安定的に食料を享受していくために
    ■学習内容
    農業経済学は、日本や世界の食糧の生産・流通・消費システムやその生産者が抱える環境など、農業を社会科学の視点から研究する学問だ。農作物が流通する市場や農業政策を通したマクロな視点、そして個々の農業経営といったミクロの視点の2方向からアプローチする。
    マクロな視点では、日本の農業と世界との関わりを研究し、食糧自給率の低い日本の経済構造、農業物貿易、日本の農業の問題点など国際的な問題も研究テーマとなる。ミクロな視点では農業生産者の所得向上や経済的な安定の実現をめざして、機械設備への設資、労働力投入の問題など、限られた資源で最大の利潤をあげる方法を考える。いずれにしてもベースは日本の農業研究になる事が多いので、中国での農業経営等に活かすためには、日本と中国の比較をしながら、農業のあり方を理解していくことになる。
    大学では、低学年次に経済学、政治学、社会学などの基礎を修得、さらに農村政策論、農業史などを学びつつ、農業経営分析やアグリビジネス論といった専門科目を学んでいく。また、農業に関する知識や技術を身につげるために必要な実習や実験もカリキュラムに組み込まれている。農学系のなかでは社会科学的要素が強い学系ではあるが、やはり農業実習・実験は欠かせないものとなっている。
    ■キャリアパス
    農学と総合科学の両方の要素を含んだ学問を身につけたことを活かして、農業関連団体などをはじめとするアグリビジネスへ進む人が多い。なかには銀行や証券といった金融関係へ進む人もいる。
    また、近年では、環境関連の企業へ進むケースも見られる。さらに、大学院に進学したり、NGOや国際的な機関において、大学時代に進めた研究をさらに深めることもできる。

    農業工学・森林科学/自然環境と農・林業との融合を探る
    ■学習内容
    環境の悪化や農業従事者の高齢化、農村の過疎化など、さまざまな問題を抱える日本の農業。さらに地球規模での人口増加や環境破壊、それに伴う生態系の危機など、難しい問題が浮かび上がっている。これらの問題の解決をめざしつつ、農作物を効率よく生産するための技術を研究するのが農業工学だ。
    農業工学は主に農業機械と農業土木の2分野に分かれ、さらに近年では環境関連分野の視点からも研究が進められている。
    農業機械系では農業生産に利用される機械や施設を研究する。田植え機などの省力化機械や効率的な栽培施設の開発、さらには農業ロボットなどメカトロニクスを駆使した研究も盛んだ。
    農業土木系は農地や水資源環境の整備などが研究テーマ。農地整備・保全や灌漑設備の充実をはじめ、自然との共生をめざす社会づくりという視点からの環境へ配慮した取り組みも進められている。また、環境関連分野では、資源の有効利用と生態系の保全の面から農業のあり方を考察する。
    自然を舞台とした農業の分野にはほかに森林科学がある。森林科学では森林資源と人間との関わりに注目し、森林資源の保全育成、利用、生産管理などについて学ぶ。森林内外の生態系や環境などの自然科学的側面だけでなく、林業の問題点に経済・経営学、社会学といった社会科学面からもアプローチを行う。また、最近ではこうした従来からの領域に加え、環境保全の立場からも森林が研究対象となっており地球温暖化、砂漠化、酸性雨の森林破壊など、地球規模の環境問題をテーマにした研究も盛んだ。
    ■キャリアパス
    農業工学系出身者の場合は、専攻が土木・機械・環境分野と分かれているため、進路も専攻ごとに異なるケースが多い。一般企業では建設会社、設計コンサルタント会社など、機械分野では機械メーカーなど製造業への進出が目立つ。一方、林学系出身者では製紙会社やハウスメーカーなどで専門家として活躍している人も多い。

    水産学/海洋生物資源を多角的に研究
    ■学習内容
    水産学は、海や河川、湖沼などの水産生物資源の有効利用を追求する学問であり、学問分野は大きく漁業・水産資源学、水産環境学、増養殖学、生産化学・製造学の4つに分けられる。
    「漁業・水産資環学」では、水圏生物の資源量の推定や管理法、行動特性・生理学的特性の研究、そしてそれらを捕獲する手段・漁法を学ぶ。「水産環境学」では海洋の生産力維持、環境保全、修復法の開発を学ぶ。「増養殖学」では、環境への影響を考慮しながら、生物を効率的に育成し、増やすための技術・方法を追求する。「生産化学・製造学」では食品としての水産物の加工・保存・利用・開発・製造や品質管理などを研究する。
    最近では地球規模での海洋調査も盛んに行われており、人間と海洋の適切な関わり、水産資源の保護や将来の動向を予測する研究も進んでいる。
    ■キャリアパス
    水産会社や食品産業などへ就職し、研究・技術者として活躍している。養殖場、海洋環境調査会社、水質検査会社、漁協なども挙げられる。
    そのほかには、水産試験場などといった水産関連の機関、教育研究機関に就職する道も開かれている。
    研究職希望は多いが、高度な知識・技術を求められ、難関といえるだろう。また、大学院への進学者も増加傾向にある。

    獣医学・畜産学/人間と動物の関係を通じ生命科学を学ぶ
    ■学習内容
    大学での獣医学は、日本で獣医としての活動が可能になる獣医師の養成を主目的とし、獣医学部あるいは農学部などに獣医学科として設置されている。主に家畜動物の病気の診断や予防治療方法を研究する。また、近年問題となった口蹄疫、BSEや鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症など人間と動物に関する病気の予防などへの対応も学ぶ。このほか動物用医薬品の開発研究、絶滅危惧動物の繁殖保護などもこの学問の領域だ。獣医師は日本ではペットのお医者さんというイメージが強いが、本来は公衆衛生や人獣共通感染症の専門家でもある。
    獣医学科の修業年限は6年間であることに気をつけたい。低学年次に解剖学、細胞生物学など基礎的な知識を修得し、3年次からは専門的な研究が始まる。実習用動物を使っての実験・実習も行われる。6年次には病院での実習・卒業研究を経て、日本での国家試験を受けることになる。
    畜産学は牛や豚、鶏といった家畜動物の特性を科学的に分析し、おいしく安全な肉や卵、牛乳、乳製品、食肉加工品などを効率よく生産し、人間の食生活に利用することを目的とした学問分野だ。飼料開発やえさの与え方による家畜の品質向上のほか、家畜の機能、代謝生理、遺伝や育種、飼育環境の衛生管理や環境整備などについて研究する。動物の成長や生殖の本質を追究する学問といえるだろう。
    畜産学では最近、野生動物の生態系保存や新たな実験動物の開発、異品種のかけ合わせや遺伝子操作技術を駆使した研究も盛んだ。農芸化学や生命科学分野との連携も強く、とくにバイオテクノロジーの分野は今後ますます注目されることだろう。
    ■キャリアパス
    獣医師養成課程の卒業者は、動物病院、衛生研究所などの獣医師、それ以外は動物相談のカウンセラーや獣医看護関係の職が多い。
    民間企業では、畜産、乳業、飼料、食品、製薬メーカーなどへの就職が一般的だ。家畜に関する高い専門知識や経験が買われ、バイオ技術を活かした製品の研究・開発をはじめ、医薬品開発や新商品の開発など、幅広い分野でスペシャリストとしての活躍が期待されている。

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    15.医学/歯学/薬学

    医学/高度な知識と倫理観が求められる
    ■学習内容
    医学は人間の病気の予防と治療に貢献する学問だ。高水準の技術や専門知識の習得はもちろん、高い倫理観・道徳観や責任感が求められる。
    医学科は6年制で、「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づいた教育が行われている。1~4年次で人体の各器官の構造や機能、医学・医療と社会との関わり、診療の基本に関することなどを専門基礎科目や専門科目として学び、臨床実習前に行われる全国共通の共用試験に合格すると、5・6年次から臨床実習がスタートするというカリキュラムが一般的だ。大学病院でローテーションを組んでいろいろな科を巡回し、学生が診療チームに加わり実際の医療行為を行ったりしながら、実地経験を積んでいき、卒業時に日本での医療活動が可能となる医師国家試験を受験し、医師資格を得ることとなる。医師資格はあくまで日本での医療行為を行うためのもので、中国で医療活動を行うためには国際医師免許などが必要となってくるので、資格に関しての正しい情報を確認しておくこと。
    なお、各大学ではコアカリキュラムから3分の2、残り3分の1は各大学が特色あるカリキュラムを作ることができる。特色あるカリキュラムという点では、地方での医師不足を背景に地域医療や地域医療実習に力を入れる大学や、研究医不足を背景として2・3年次からの研究室配属に力を入れる大学もある。希望の大学の教育内容もよく見ておこう。
    ■キャリアパス
    卒業生の進路は、臨床医・基礎医学研究者に大きく分かれる。卒業後、医師国家試験を受験し合格すると、正式に医師免許が得られる。そして、大学病院などで研修医として2年以上の臨床研修が義務づけられている。研修終了後は医療の最前線で活躍する人が多く、大学院等で基礎医学の研究医を志す人もいる。そのほか、公衆衛生学・環境医学の研究に関わる場合、社会医学の分野で活躍する場合もある。
    なお、医療の現場では、患者との間で病状の説明など非常に高度な日本語能力が求められることを肝に銘じておこう。

    歯学/重要性の高まる口腔医療を担う
    ■学習内容
    歯学は主に口腔に関する健康科学。歯やあごなど口腔部は健康にとって非常に大きな役割を占める部分。食べることや話すことは、健康な口腔があって成り立つもの。歯学では単に虫歯や歯周病の治療だけではなく、歯の健康をからだ全体の問題として取り組むべく幅広い研究が行われている。
    歯学部は医学部と同じ6年制で、1・2年次に一般教養とあわせて基礎歯学を学び、3年次から専門的な知識を修得していく。そして医学科同様、共用試験をクリアすると臨床実習がスタートする。機材を使った治療が欠かせないことから特殊技術の修得や理工学的知識も必要だ。卒業時に日本での歯科医としての活動が可能となる歯科医師国家試験を受験し、歯科医師資格を得ることとなる。医師資格同様、歯科医師の資格ははあくまで日本での歯科医療行為を行うためのものであることに気をつけたい。
    ■キャリアパス
    歯科医師になるには歯科医師国家試験の合格が必要である。2006年4月からは、試験合格後1年間以上の卒後臨床研修が義務化された。研修終了後の進路は、勤務医や開業医の道を進む人が大多数を占める一方、大学院へ進学して研究者をめざす人もいる。
    歯学科以外の学生には、歯科衛生士や社会福祉士の国家試験受験資格が与えられる。卒業後はその資格を活かした多彩な分野での活躍が期待される。

    薬学/薬のスペシャリストを育成
    ■学習内容
    薬学は、薬をはじめとする化学物質と人体の関わりを追求する学問である。研究分野は主に「製薬学」「医療薬学」「衛生薬学」「生物薬学」の4つに分かれている。
    「製薬学」は医薬品の合成・製造といった開発や製造技術、さらに薬の安全性までを研究する。「医療薬学」では、人体と薬のかかわりを理解し、医薬品の調合調剤・使用・管理などを学ぶ。「衛生薬学」は、健康の保持と増進をテーマに、安全性や環境に対する化学物質の影響などを学ぶ。「生物薬学」では、自然界の微生物などの生物を人間の治療薬として利用するための研究を行う。
    薬学部には、6年制と4年制の二つの学科があり、就学年数が違うことに注意しておくこと。4年制の「薬科学科」や「創薬科学科」などは、研究者や企業などでの創薬研究に携わる人材の養成を目的としている。多くの人は率業後、大学院に進学し、さらに研究を続けることになる。6年制の「薬学科」は日本での薬剤師養成を目的としている。薬学科は4年制の教育内容に、薬剤師になるための臨床系の科目や実務実習が加わると考えればよい。医薬品の進歩高度化に伴い医薬分業が促進され、薬剤師の重要度が増すとともに、業務内容も従来の調剤調合だけでなく、服薬指導や薬歴管理といった細やかな内容が求められている。4年次終了後、共用試験に合格すると5・6年次には実務実習として病院や薬局で実習を行う。
    ■キャリアパス
    6年生の学科では、卒業後に薬剤師国家試験の受験資格が取得できる。合格後は、多くが薬剤師として病院や医療関係で活躍するほか、薬局、薬店など、その職域は幅広い。
    4年生の学科では、製薬会社の開発研究室、化学系、食品・衛生関連企業、SMO(治験施設支援機関)などのほか、MR(医薬情報担当者)となって、医療機関に薬品販売、情報提供を行う仕事に就くことが見込まれる。

    医療技術系/医療の一端を担う各分野のスペシャリストに
    ■学習内容
    医療技術系の学科では検査技術・手法の研究開発、および臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士などの養成を目的としている。いずれも医師とともに「チーム医療」にあたる高度な知識と授術を持った各分野のスペシャリストだ。医学の発達により病気の早期発見や病後のリハビリテーションなど医療技術の重要性は増すばかり。そういった医療の一端を担う。
    医療技術系の学科を分類すると検査系、リハビリテーション系、その他の領域の3つに分けられる。検査系では血液や尿、心電図、レントゲンなどから体内の生理状況を調べる。疾病が複雑になるにつれて、現代医療では臨床検査も広範囲かつ、技術も高度化されており、その学ぶ分野は広く深いものになってきている。リハビリテーション系は理学療法、作業療法、感覚機能療法の3つに大別される。理学療法は運動や物理療法により機能回復をはかる。作業療法では作業を通して生活機能や社会活動の向上をはかる。そして感覚機能療法では言語障害や視覚障害の治療に携わる。その他の領域には鍼灸医学がある。鍼灸医学は大学では診しい学問分野だが、学部を設置しているところもある。
    どの学科も実習・演習が多くハードだが、学んだことがそのまま将来につながるだけにやりがいが感じられる学問だろう。
    ■キャリアパス
    医療技術を学ぶことで、病院やクリニックなどの医療機関で臨床検査技師、放射線技師、臨床工学技士、リハビリテーション技師として活躍することができる。また、製薬会社や医療機器メーカーでの技術サポートや、研究機関での医療技術者としてのキャリアも考えられる。さらに、医療技術の分野での専門資格を取得することで、専門分野での高い技術力を持ったプロフェッショナルとしての道も開かれている。

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    16.看護/保健・福祉学

    看護学/精神的なケアまで任される看護スタッフ
    ■学習内容
    看護学には看護の基礎技術や理論を学ぶ基礎看護学と、小児、母性、高齢者、障害者といった対象別の看護を実際的に学ぶ臨床(応用)看護学の2分野がある。
    医療の発達に伴い、医療の現場では終末期をどう生きるか、慢性症状を抱えてどう生きるかなど、よりメンタルな部分にも重点が置かれるようになった。そのため看護スタッフには、単に看護技術を持った医師のアシスタント的役割だけではなく、患者への精神的なケアも行えるよう高度な知識を持ち、医師と協力して医療を行う独立したスペシャリストとしての役割が求められている。
    大学では学年が進むにつれて専門科目中心のカリキュラムとなり、医療現場での実習も多くなる。患者と向き合う実習は看護学で最も有意義なステージとなるだろう。また、最近ではケアのプロとしての自覚や、コミュニケーション能力を高めるための教育も工夫されている。
    ■キャリアパス
    看護師と聞くと、病院や診療所で働くものと思ってしまいがちだが、そうとも限らない。最近では在宅での療養を望む人の増加や、児童福祉に対する看護の必要性など、看護に対するニーズが多様化している。そのため、訪問看護ステーションや老人福祉施設、社会福祉施設など活躍の場が広がっている。
    また、より高度な専門知識を身につけるため、あるいは研究を続けるため、大学院へ進む人もいる。病院などで実務経験を積んだ後に、進学する場合もある。

    保険・福祉学/健康で人間らしい「生」への支援
    ■学習内容
    少子高齢化が進む中、在宅医療の推進や終末期医療などが重要性を帯びてきている。病を治すことを目的とした従来の医療の在り方から、病気の早期発見や予防を含めた、人間の身体的・社会的・心理的側面を考慮した広範な医療への見直しが進んでいる。また、障害を持つ人が地域社会で自立し、健常者とともに普通に生活できる社会をめざすノーマライゼーションの考え方も定着してきている。このように、医療と密接な関係を持ちながらも、これまで比較的結びつきの弱かった保健・福祉分野への期待は大きく、高度な知識と技術を備えた専門職の養成が急務となっている。
    保健学では、心身の健康を保ち、病気に対する予防、早期発見、治療、回復までの研究を通じて社会福祉の向上をめざす。医学が病気そのものを対象とするのに対し、保健学は病気を含んだ人間の健康全体を対象としている。福祉学は、高齢者や障害者、児童といった社会的弱者およびその家族を、福祉的立場から援助・支援していく方法を模索していく。具体的には、社会福祉士やソーシャルワーカーを育成していくことが中心となっている。
    もちろん言うまでもなく、目の前の人間に対する、深い愛情と理解を持った人格が何より前提でありその上でいずれの分野も、保健・福祉系では教育学や社会学など関連分野の知識・教養だけでなく、様々な課題に対処できる実践的な能力が要求される。
    ■キャリアパス
    まず最も注意すべき点は、たとえ当該国家資格等を取得した日本の大卒等の留学生の場合でも、外国人がこの分野の専門職・技術者等として就労するためのビザは、原則発給されない。既に社会的需要等の背景より、法務省は規制緩和に向けて検討をすると発表したが、2014年3月現在、まだ法改正には至っていない。
    しかしもちろん、この分野で学習した内容や習得した資格は、これら現場ではなくとも、例えば医療系企業の総合職などの就職には有利であると考えられ、また昨今の少子高齢化において、特にこの人材不足は大きな課題であり、法改正とともに就労機会の改善と拡充は今後より一層期待される。